週末、某日。
駅前の不動産屋へ嫁はん(仮)と二人で行ってみた。
ーまいど。
ーまあ、こっち入り。
名前を告げて不動産屋に入ると、パーテションで仕切られた部屋に通され、ネエちゃんからなにを飲みますかと差し出されたメニュー表に書かれたいくつかの飲み物の中からそれぞれ好きな飲み物を選んでそう告げる。俺はホットコーヒーを頼んだ。
これまでにも部屋を借りるために何度か不動産屋へは行ったことがあるが、賃貸のそれとは違う、丁重なもてなし。
しばらくして担当のニイちゃんが出てきて、名刺を差し出す。
で。
事前に、嫁はん(仮)がネットでこれが良いのではないかと考えてそう報せておいた物件の間取り図の他、こちらの予算と駅からの距離、部屋の広さなどに相当する他の部屋の間取り図のコピーを机上に並べ、こんなんはどうですか。とのたまう。
それはそれとして。
ーそもそも、俺は家を買えるのでしょうか? ほんまに、ほんまに貯金ないんですけど、実際のところ、めちゃめちゃ気に入った部屋があって買いたい! と思ったところで、いくらぐらい初期費用が必要なんですか? 現金が。ほんまに貯金ないんですけど。ついでに、4ヶ月前に転職したばっかりで、そもそもローンを組めるのですか、私は?
ー銀行にもよりますが、3ヶ月以上経ってるなら大丈夫でしょう。
ーそれからもうひとつ。もしかすると私は、ブラックリストに載ってしまっているかもしれないのですが……。
俺は8年ほど前に一度債務整理をしていて、それから3年かけて借金を返済。5年前に完済したものの、それからブラックリストに載りクレジットカートもつくることができない底辺の人間であったのだ。
それが、昨年の9月に転職したことをきっかけにグループ会社のクレジットカードをつくらされ、私はブラックリストなのでそのように高貴なクレジットカードなとつくれませんよ。と言っていたのだが、あろうことかあっさりとクレジットカードは発行されてしまった。
もともと、嫁はん(仮)に俺はカードもつくれないし、家も車も買えぬぞということは伝えてあったのだけれど、クレジットカードが発行されたことで嫁はん(仮)に火がついてしまった。買えるじゃん、家! みたいな。
ー大丈夫じゃないですかねえ。知らんけど。
みたいな感じで、なんとなくOKということになり、俺たちは提示された間取り図のコピーを仔細に眺め、ここは狭いだの、ここは駅から遠いだのと検討をはじめた。
その他、初期費用について、固定資産税について、住宅ローン控除について、仲介手数料について、修繕積立金について、などそこそこ詳しく説明を受けたと思うが、俺はまだマンションを買う気はないただ見に来ただけです。という思いだったので、よく覚えていない。
いったん近所のジョナサンで昼飯を食った後、選びに選んだいくつかの物件を見にいくことにした。
<続く>





