海鮮丼前回、和光市の中古マンションを内見してから1ヶ月ほどが経ったでしょうか。
嫁はん(仮)は諦めることなく、毎日手頃な物件を探していた。
時間ができるとiPhoneか俺のMacBook Airで物件を探し、口を開けば家の話をする。
俺はもう、うんざりしていた。死のうかな。

つべこべ言わずにマンションを買ってしまえば、毎日のこの地獄のようないらいらから抜け出せるだろうか。

成増、和光では手頃な物件がないと判断した嫁はんが次に目を付けたのは、志木。
東武東上線を少しずつ埼玉方面へ進んでいく。
いっそこと、川越とか森林公園まで行けば安くて広い家があるんちゃうん? 買わへんけど。

志木駅から8分。中古マンションではあるが全棟丸ごとリノベーションしている。2,980万円〜。

嫁はん(仮)がこれほどの情熱を傾けて家を購入したいというので、俺も頑なに買わないぞ、とまでは思わない。
本当に良いなと思えるマンションがあって、現実的に無理なく支払える額なら買っても良いかな、と思いはじめていた。

ただし、3,000万円以内で。

と言っていたら、嫁はん(仮)が見つけてきたギリギリの値段のマンション。2,980万円〜。

志木駅を降りて駅前のイオンに入ってみて、ちょっと寂しいけど悪くないね。などと、まだ物件も見ていないのに少し買うつもりみたいな会話を交わしたりなんかして。うふふ。

今回は不動産屋ではなく、現地販売センターに直接赴く。
名前を告げて案内されたのは、マンションの一室。コーヒーを飲みながら、説明を受ける。
3,280万円の部屋はこんなで、3,480万円の部屋はこんなで、ご自身で組み合わせを選んで間取りを決められますよ。
嫁はん(仮)は目を輝かせて聞いているが、買えないものは買えないのだ。いいからさっさと2,980万円の部屋を見せてくれ。

はいどうぞ。

と言って案内されたのは、マンションの1階。
これまで見たマンションと間取りはさほど変わらないが、一つ一つの部屋が貧乏くさくなくて、広い。また、丸ごとリノベーションされているので中古感はない。新築の部屋のようなにおいがする。新築の部屋を見にいったことないけど。
また、モデルルームとして家具が備え付けてあるのもこれまでとは違って、いいなあ、と思う。

そう。俺は不覚にも、いいなあ、と思ってしまった。ええやんけ。

他にももう1部屋、予算オーバーの部屋を案内された。やはり値が上がる分設備はさらに豪華なものになっていて、嫁はん(仮)の目の輝きはさらに増している。

一通り見てまわった後、もう一度最初の部屋に戻って営業のにーちゃんと話をする。

いかがでしたか?
3月中に契約していただけましたら、ここにある家具も全部付けますよ。

決算前なので、なんとか3月中に契約させたかったのだろう。

……ちょっと、考えます。

俺たちはマンションを後にした。
もう1軒、嫁はん(仮)が目を付けていた中古の戸建てを見にいこうと歩き回ったが見つからず、志木のユニクロで部屋着を購入し、家に帰って屁をこいた。

もう買っちゃおうかな。どうしようかな。

<続く>