海老フライ不動産屋のおっさんから、3日ほどで仮審査の結果は出ると聞いていたのだが、どこからも連絡はなかった。
ネットで調べると5日とか1週間とか書かれていることもあり、結局どれが正確な情報なのかは分からない。とは言え、現実に仕事として契約に携わっている不動産屋の情報にそれほど嘘はあるまいと思い、ということはやはり審査は落ちたのか。と落胆しつつ少し安心していた。ほれ見たことか。どうせ俺には無理なのだ。

不動産屋からは、まだですか? と何度もメールが来たが、まだです。と返すしかない。

4日目が過ぎ、5日目になって、仕事中に知らない電話番号から電話がかかってきて出てみると、間違い電話でした。どひゃー。みたいなこともあり。

次の日。ようやく銀行から電話がかかってきた。一番金利の低い、まず通らないだろうと思っていた銀行。

仮審査に、通った。

すぐに嫁はん(仮)にLINEで報告をして、その日の夜は祝いだといって少し酒を飲んだ。毎日飲んでるけど。
やるやんけ、俺。

その後、他の銀行からも仮審査通過の連絡があったが、結局、最初に電話のかかってきた銀行へ本審査の申請を出す。

まだ油断はできない。どこの銀行でも仮審査にとおった以上、ブラックリストの問題はクリアーされていると思われるが、まだどんでん返しがあるかも知れない。
借りられたとしても、相当額の頭金が必要だと言われれば、アウトだ。

本審査には1週間か、早くとも4〜5日かかると聞いていたが、2日後にはまた銀行から電話がかかってきた。

ーおめでとうございます。本審査に通りました。申請いただいた満額ご融資いたします。
ーありがとうございます。

なにが、おめでとうございます。だと思わないでもなかったが、それでもなんでしょう。ようやく人並みの人間であると評価されたというか、そのような気持ちから、ありがとうございます。と答えてしまった自分が情けない。口惜しい。

不動産屋にも連絡をしたら、またおめでとうございますと言われた。なにがおめでとうございますだ。俺はこれから35年にわたって76歳まで借金を抱える身で、銀行も不動産屋も丸儲けやないけ。

などと思いつつ、嫁はん(仮)にはすぐにLINEをして、夜は祝杯を挙げた。

ひゃっほーい。

この先、ローンの契約までまだいくらか手続きは残っているし、引っ越しをするとなると今度はそのための準備も必要になる。そこに結婚も重なると、いろいろとややこしい。

その他、引越業者との価格交渉について、家具や電化製品の買い換えについて、それら家具や電化製品の配置について。など書こうと思えば書くことはまだいくらでもあるのだけれど、そんなことは些末なことなので、書かない。

ともあれ、なんだかとてもスッキリしたような気がする。

もう後には退けぬ以上、これからの人生をそういうものとして楽しむしかない。
俺は、死ぬまで埼玉県和光市民として、坂の上のマンションで暮らしていくのだ。

引っ越しをしたら、リビングとつながった広めの部屋に、大きめのデスクを置かせてもらう。
これだけが、新しいマイホームで唯一俺がこだわったところ。
周りに好きな本を並べて、デスクの上にはトレース台を置く。落ち着いたらそこで、漫画を描き始めようと思う。いつ完成するか分からんけど。

あとは、嫁はん(仮)の(仮)が取れて、嫁はんになった嫁はん(仮)が毎日幸せそうにしてくれたら、まあ、ええんちゃうん?

と思う。

<完>